吉野の山では現在もなお「山守制度」によって林業が営まれています。山守制度とは、山を所有する者(山主)が山を管理する者(山守)にお金を払い、山の木を管理してもらう管理制度をいいます。一般的な林業では山主が日々手をかけても、木が売れるまでお金になりませんが、山守制度では山を管理している中で山守が報酬を手にできるため、山守は一生懸命に木を育て、そんな吉野では長年にわたり丁寧に山が作られてきました。
ここでは、吉野の林業と一般の林業の木の育て方の違いイメージ図を入れて解説します。
<植栽>
一般的な植栽として1haあたり苗木を3000~5000本植えるところ、吉野の林業では8000~12000本植えています。(密植)
太陽の光が当たりにくいため、木もゆっくりと成長していきます。
<除伐、間伐>
木が成長してくると、太陽の光の具合、風通しを良くするために、木々の感覚を空けすぎないように配慮しながら、成長の悪い木を間引いていきます。
吉野の場合、苗木が多かった分、間伐される量も多く(多間伐)優良木が選定され残されていきます。
<間伐~伐採>
間伐は苗木を植えてから3~5年周期で繰り返し、30年程で吉野では1haあたり約3000本にします。その後70年までは7~10年周期、70年以降は15~20年周期で間伐は続いていきます。
一方、一般的な林業の場合、35~40年程度で建築用材として伐採されていきます。
<伐採~葉枯らし乾燥>
ゆっくり時間をかけて育てられた吉野材は60年生頃から建築用材として伐採され始めます。
尾根側に向けて伐採された木は、葉をつけたまま数か月間放置され、木に含まれる水分を蒸発させます。(渋抜き・葉枯らし)
この工程を置くことで吉野材の特徴である色艶が生まれています。
私たちが吉野材を使う理由
・ゆっくりと手間ひまかけて育てられた吉野材。日本の気候の中で60年生きてきた木は、建築材として姿を変えた後も、60年以上立ち続け、建て主を守ってくれるはずです。
・緻密で均一な木目、淡紅色で香り艶があり美しい。
・他県産材でも優良な木はたくさんありますが、安定して良材が手に入れることができる。
・年輪幅が細かく密度が高いため、一般的な杉やヒノキに比べて強度が高く、たわみにくい(※1)性質がある。
※1 吉野杉のヤング係数(木のたわみにくさを表す数値)は全国平均値E70の1.3倍のE90。吉野ヒノキもE110で、全国平均値を上回っています。